枠の太さ


漫画の枠(間白+枠線)いうのは、音楽で言うとドラムのような「拍(はく)」をとる役目をしている。枠の太さは音量にあたると思う。

コマとコマが枠によって大きく離れているほど、読者がそれぞれのコマを独立した絵として認識し直す力が強くなる。


漫画では通常、連続したスムーズに進行するコマを横に並べ、強く転換したいコマを次の段に描く傾向がある。例えば場面転換をする場合、次の段に場面転換したコマを配置すればハッキリ流れが区切られた感じがするのに対して、前のコマの左に場面転換したコマを配置するとスムーズな(下手をするとハッキリしない)場面転換に感じられる。

つまり次の段に目を移すときに比較的強い「拍」が生まれる。だから強いテンポ感を出したい少年向けのアクション漫画は、概して枠が太い(特に横方向に引く枠が)。絵を描ける面積を削ってでも、枠が生むリズム感が重要なのだ。


反対に叙情的な少女漫画などでは、枠が細くなり、間白のない枠線1本の枠なども多い。間白を細くすれば、コマ間の連続感が増してメローな印象になる。

ハチクロで有名な羽海野チカ先生は、この両方を使い分け、とても変化に富んだ枠を描かれている。間白の太さがここまで変化する作家を、僕は他に知らない。横方向に引く枠が太いのに縦方向の枠が1本線だったりすると若干読みにくい気がするが、意図的に枠のバリエーションを増やす作意はすばらしいと思う。間白の横と縦の比率が、別に固定されていなくてもいいのだと強く教えてくれる。

追記

「枠線+太さ」で検索されてくる方向けに追記。

枠線や間白をどのくらいの太さにすればいいのかは、基本的には自分の好きな漫画を、原稿サイズとの比率を計算してマネすればいいと思う。しかし、枠線の線の太さは細くて計りにくいからわざわざ検索して来られるのだと思う。

とりあえず0.5mmにしておいて、画を描き込んで行き、なんだか細いなと思ったら1mmの線などでなぞり直せばいいのではないか。0.5mmより細い枠線の作家さんもいると思うが、0.5mmなら太すぎて違和感があるという事にはなりにくいはずだ。

枠線や間白の太さは上記の要素や、画の線とのバランスの兼ね合いがあり、何度か原稿を仕上げないと決まらないと思う。プロの漫画家にも連載中にどんどん変えてくる方がいるし、西炯子先生のように定規で引かない人もいる。1話ごとに考え直してもいいだろう。

自分の原稿を印刷できない人は、画を描き込んだ原稿を50~60%に縮小コピーして(単行本サイズに近づけて)様子を見るとか。コピーやプリンターは少し線が太く出るかもしれないが、0.5mmがいいか1mmがいいかぐらいは分かると思う。