躍動主義
漫画のキャラは動いていたほうがいい、躍動感があるほうが良いという考え方がある。理由として
が考えられる。
しかし躍動感にも限度があるわけで、もし躍動していればいるほど良いのなら、アクション漫画ばかりになりそうなものだが、そうはならない。
2の理由に関しては、むしろ呼び戻しが来ているように思う。ギャグのヒット作「聖☆おにいさん」や「テルマエ・ロマエ」を読むと、画面にメリハリはあるが、キャラが躍動しているのとは違う。力感はあるものの、表現はむしろ過去のギャグ漫画よりもスタティック(静的)ではないだろうか。野球漫画やサッカー漫画が流行し、キャラがコマ内をドタバタと動き回っていたピークは80年代後半くらいかもしれない。
家庭のテレビが大型化し、漫画というメディアの画面の迫力は相対的にやや低下しているように感じる。デジタル漫画になったとしても、端末の画面が特に大きくなるわけではない。
1の理由にからめて言えば、漫画を文章コンテンツとの競合を避けて画的な迫力で差別化していく時代は終わったのではないだろうか。むしろ、画的な迫力に秀でた映像コンテンツとの競合を避け、書籍であることを活かしたネタの濃さ・情報伝達量で差別化できそうだ。読み手の高齢化もある。
ただしそこでもやはり限度というものがあり、コマ内を字で埋め尽くした漫画が主流になるとは思えない。娯楽はなんでもバランスが肝心だ。
それでも漫画は「画的で軽い本」という位置づけから「がっつりと作品の世界観にハマれるアイテム」に移っており、昔よりもリッチな媒体と感じられるようになった。作品世界を適切に描くための躍動感は歓迎だが、ページ稼ぎのドタバタやチャンチャンバラバラに金を払う気にはなれない、という気分は強まっていると思う。
漫画の描き手は躍動感のある画を描ける方が良いだろうし僕も精進していきたいところだが、動きのない漫画には意味がないというような意見(躍動主義とでも言おうか)には賛成できない。
それにしても、「技法メモ」じゃないな……。