コマ割りの手順

「コマ割りの技法」「コマ割りのコツ」的なことを検索して来られる方が多いようなので、僕なりの手順を書いておきます。初めて漫画を描くような、どうやって割ればいいのかさっぱり分からない人向け。たぶん、アクション漫画でも少女漫画でも共通の部分までです。

  1. ストーリーにそって何を描くか、という絵コンテ的なものはできているという前提で話を進めます。
  2. まず自分の漫画の基本的な段数を決める。僕は4段(上下に4つのコマが並ぶ)が基本で、それを左右4つに割った16コマから考えます(でも最終的に1ページ16コマになることは、まずありえない)。僕のコマ割りは細かいので、9分割が合う人が多いんじゃないでしょうか。
  3. 物語の最初のコマと最後のコマは自動的に配置されますね。
  4. 重要なコマを配置します。一番インパクトのあるコマは見開いた最初の段、つまり通常は右ページ上段(のどちらかといえば左寄り)にあると効果的です。左ページの上段(のどちらかといえば左寄り)も印象に残りやすいです。
  5. 左ページの左下に、なるべく話を引っ張れるコマが来るように配置します。オチではなく、続きはどうなるんだろうと読み進めてしまうコマです。
  6. 間のコマを配置していきます。
    • 大きくしたいコマは細かく分割しておいたコマを左右2個とか、左右上下4個とか、くっつけていきます。
    • テンポよく、よどみなく進めたいコマは左右に配置します。
    • コマの段が変わる(上の段から下の段へ視点が移る)ときはちょっとインパクトが出るので(音楽でいうと「拍」が強くなるような感じ)、場面転換をしたり、重要な台詞を言うようなコマは段を変えて配置するとうまくいきやすい。ギャグのオチなんかは、ページ中段あたりが配置しやすいと思う。
    • 一連の動作を描くような連続性の高いコマは、ひとつのコマを割ったかのようにまとまりで考えて、くっつけて配置するとうまくいきやすい。斜め線で分割してやるとコマ同士のまとまり感が増してさらにそれっぽい。
    • 絵で見せたいコマ、インパクトのあるコマから逆算して、後ろから作っていくと上手くいきやすい。
    • コマの枠線を描かないコマは、浮遊感や開放感が出る。あと絵を大きく描けるのでインパクトが増す。静かに緊迫感を出したければ枠線があるコマを連続させたほうが良い。ページの外へなんとなく視線が流れてしまう場合は(絵をよっぽど工夫するか)枠を作っておく。
    • 断ち切り(ページの外側いっぱいまで絵を描く)の効果も、基本的には上に書いた枠なしゴマと同じ。全ページ全コマが断ち切りゴマなら特に効果はないが、たまに断ち切る場合は効果が強くなる。連続して断ち切ったコマはコマ同士の連続性が強まる。
    • 枠(コマとコマの間)の幅がせまいとメローな感じになる。ある程度枠が広いとキビキビとしたリズムが出やすい。特にアクション漫画では、コマを上下に分割する横枠を太くして下の段に読み進んだときのリズム感を強める。
  7. 前後のページ、近いページで同じようなコマ割りがあると単調なので、そうならないようにチェックする。
  8. ネーム→下書き→ペン入れと進む段階の中で、中の絵に合わせたり、遠目に見開き状態でコマ同士のバランスを見たりしながら形を整えていく。漫画のジャンルとかいろいろいろいろ考えて、見やすいように、いじりまわす。完成。

上に書いた「ここにこういうコマがあると効果的」というのは視線誘導とか、その他もろもろの影響で例外がいっぱい出てくると思いますが、基本的な傾向として、ということで。

コマ割りの作業を音楽作りに例えると、曲の各部分の時間配分と音量とリズムと漠然とした緩急を設計する作業のようなもの、バンドで言うとドラムとベース部分の作曲に近いんじゃないかと思います。最初は読みやすさ優先でなんとなくやればいいと思いますが、絵・ストーリー作りと並んで重要度は高いです。