名作四段

エマ (7) (Beam comix)
遅い話ですが「エマ」が完結。この作品のいい所は沢山語られていると思いますが、わりとクライシスを回避してしまう(作者がキャラに対してサディスティックでない)展開にも関わらず、人物の感情や話が引き締まってみえるのには、(綿密な描写はもちろんとして)コマ割りの力を感じました。
僕の勝手な言葉ですが「名作四段」。ドラマティックに登場人物の感情を表現するのには1ページ四段がベースのコマ割りが適していると思います。
これは、1ページに一定の情報量をつめこみながら、収縮と拡大・緊張と解放のダイナミズムを生み出すのには小ゴマの活用と、小ゴマから中ゴマ、中ゴマから大ゴマへの展開が重要だということの言い換えでもあります。
もちろん四段でなければ名作でないという決めつけではありません。例えば「みどりのマキバオー」は三段がベースです。でも僕はつの丸先生が四段ベースだったら、独特のほがらかさは減じてしまうだろうけれど、もっと引き込みの強い作風になるんじゃないかと思っていたりするのです。
吉田秋生先生の「カリフォルニア物語」は、とくに何段割りと言いにくいですが、基本は四段と言えます。開放感やインパクトのある展開のページで三段になります。
アクション性の高い「BANANA FISH」は三段ベースです。BANANA FISHのほうがずっと泣ける、アッシュ最高という方も多いとは思いますが、僕は感情描写に関しては「カリフォルニア物語」のほうがずっと引き込まれますし、「BANANA FISH」は“ゆるく”感じます。美少年の葛藤を一歩引いた視点から楽しむかんじ。
めぞん一刻のび太の恐竜笑う大天使…一見コミカルなキャラクターが演じるストーリーについつい引き込まれて感動してしまうのは、四段で読ませるストーリー性と描写、そしてときに四段から三段・二段へと展開するコマ割りのダイナミズムの力が働いているのではないでしょうか。