萌え漫画の中で面長・細面のヒロインを描くには

萌える顔の長さの限界 - QFMの漫画技法メモの続きのような話。

萌え要素がある漫画では、キャラを頭でっかちに描く技法が一般的で、頭でっかちにすればするほど萌え効果は大きい*1。逆に顔を面長に描くと、顔部分の面積が大きくなり、相対的に頭が小さくなる結果、萌えが生じにくくなってしまう。

少女漫画では、年上でかっこいい女性キャラなどを面長にする時、本当にりんかくを面長に描く傾向がある。しかし、そのキャラは敵役だったり、萌え要素のない友人役であることが多い。そこまで切実に萌え要素が求められていないからだろう。

男性向け萌え漫画では、もうひとつ凝ったテクニックが使われている。ひとつの作品の中で、キャラの「頭でっかち率」を変えるのだ。面長のキャラでも、頭を大きくするパースを多めにかければ、顔部分が小さくなり頭が大きくなる。

すると顔はどうなるか。あごは小さくなり、りんかくはさらに逆三角形に近づく。目尻が上がって、三白眼気味になる。そうすることによって、同じ作品内の他のキャラと顔の長さが同じになのに、顔は細面・もしくは面長で大人っぽくみえるのだ。

問題は、違和感だ。ひとりだけ顔にかかるパースの比率が違うのは目立つ。また作者が描くにあたっても、それをすばやく再現するのはたいへんだ。そこで先ほどの顔の特徴を、キャラの固有の顔立ちということにしてしまう。そうして作品になじませるのだ。

細面なのは、もともとやりたかった設定だ。目尻は上がり、三白眼気味のキャラ。頭はただでさえ大きくなっているので、髪型はストレートや一本結びなどにして、ボリュームがですぎないようにする。目の横からおでこにかけてのりんかく(超重要ポイント)が、必ずちらっと見えるように髪型をデザインする。あとは大人っぽい服装をさせれば、読者はそのキャラが他のキャラより頭でっかちなんてことには気がつかない。萌えデフォルメが効いているので、人気が出やすいだろう。

この応用で、他のキャラは反対にほっぺたが大きな下ぶくれ型にして、子供らしくみせることもできる。顔の縦横の比率はそのままに。

NEW GAME! (2) (まんがタイムKRコミックス)

僕がこの技法に気がついたのは、「NEW GAME!」の八神コウを見て彼女がなぜ面長に見えるのか考えてからだ。作画のブレの少ない精密な絵なので観察しやすかった。実際本当に「一作品の中でキャラごとに顔にかけるパース率を変える」というような理屈で描かれているかどうかは知らないが、分析すれば以上のようなことになるだろう。自分の作品にも活かしていきたいと思う。

この技法がいつからあるのか考えていたが、「うる星やつら」の中で保健医のさくらがすでにこのような描かれ方をされている大人キャラだったように思う。昔のアニメーターはその萌え技法をアニメで再現することができなかったが*2、今の「境界のRINNE」で死神鳳(あげは)のキャラデザを見る限り、30年後のアニメーターは十分以上に理解している。

*1:ただし、瞳の高さ(=縦方向の長さ)が目の下からあごの先までの長さを越えてしまうと、目の大きさの気持ち悪さが隠せないことが多いように思う。また言うまでもなく、リアルな大人向けの作品で大きすぎる頭や瞳は違和感をもたれがちだ。

*2:例えば「ラムの瞳の面積は小さいが、瞳の縦の長さはあるので萌えが発生しやすい。縦の長さが十分でないときも、つり目気味の三白眼だからかわいく見える」という理屈がわかっていなかった。