あるはずの感情変化をスルーしない

「こういう事件が起こったら、この登場人物はこうこう思ってAをするが、やがて間違いに気づき、Bをするだろう」という順番があるとして、描き手はメンドくさいから途中のAをすっとばしたいときがある。というか、書く側としては常識的な思考や行動であるAはつまらないので、はやくBについて話を進めたいときがある。

だが往々にしてできない。登場人物がAをするのは、往々にして「読み手が自然と感じる流れ」であり、その右往左往が「読み手の読みたいところ」であることが多いのだ。経験上では、Bを詰めてでもAをしっかり描いたほうが良い話になりやすい。「この人はおとなだから、感情が起こるとしても、このくらいの小さな起伏のはずだ」という場合でも、その過程についてきっちり触れなくてはいけない。そこを面白くするのには骨が折れる。そういう意味でも、頭の良いキャラや精神年齢の高いキャラを中心に面白い話を書くのは難しい。

他にも、「こういう事件が起こったら、この登場人物はAという感情とBという感情が両方わきあがるはずだ」という場合がある。やはり両方描いて、葛藤を起こさなければならない。しかもそれは、シーンの中心としてしっかり描かれないといけない。何十ページにも及ぶかもしれない。

描き手としては、論文のように書けば一行ですんでしまう論理展開に気をくばり、その論理展開のためには数十ページが必要になる可能性を考慮しつつ、スルーのないプロットを書くべきなのだろう。