短編で感情移入できる主人公

短い読み切りでドラマをやりたい時、主人公に感情移入してもらうのは長い話よりも難しい。それがうまい人は、なにかしらテクニックを持っているのだろう。

ちょっとした共感できるセリフ回しや、かわいい絵、主人公に思わず応援したくなる弱点を持たせる方法とか、人は試合で負けている側・サスペンスで追われている側に感情移入しやすいので主人公にそうさせるといった方法もある。

読み手が感情移入していなければその後のドラマを凝っていても感動されないわけで、短編では感情移入できるまでを一所懸命考えて、ページ数が尽きる前になんとかひとつでも心を動かすシーンを、となる。

感情移入してもらいやすいよう読者に近い人物像を主人公にする、ということもごく一般的だ。少女漫画は特に、若い少女が主役というのが鉄則に近い。それで感情移入するまでのページを省けるし、その後の展開も楽だろう。

観客に対して強制的に話を進められる演劇では、このような主人公の縛りが緩く、いろんなタイプの主人公が登場するように思う。娘に国を追い出された西国の王様が放浪するというどうでもいいような話(リア王)でも、感情移入するまでのシーンをしっかり描けるから名作になるのだろう。

漫画で読者層からかけはなれた主人公を活躍させたいなら、長編を描けるご身分になるとか、なにかしらうまくやらないといけないようである。